
こんにちは。紅茶専門店ティークラブの堀内芳昌です。
「日曜日はプーレ・ロティ ちょっと不便で豊かなフランスの食暮らし」川村明子さん著を読みました。
読みながら、心の奥がじんわりあたたまるような感覚がありました。
便利さや時短が何よりも大事にされる今の日本。
けれどフランスの暮らしには、「あえて時間をかける」場面があって、その不便さを楽しむ余裕があります。
それは単なる効率の逆張りではなく、「手間をかけるからこそ味わえる喜び」を知っているからなんだろうなと思いました。
若い頃、私はイギリスやフランスにかぶれていました。音楽やファッション、文化すべてが輝いて見えて、「欧州≫日本」という気持ちを正直に抱いていた時期。
だからでしょうか、この本の空気感はすっと体に馴染んでいきました。
「フランス人は10着しか服を持たない」を読んだときと似たような感覚でした。
日曜日はプーレ・ロティ
本の中で描かれるのは、毎週日曜日に丸鶏を食べる家族の風景。
香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がり、みんなでゆっくり食卓を囲む。
ただそれだけなのに、何とも豊か。
「プーレ・ロティ」という一皿が、その家の時間や思い出をまるごと包み込んでいるようでした。
そして、あれこれと種類を求めない暮らし。やたらと多品目が持て囃されたり、家族それぞれに合わせたりする日本とは違うなぁと思いました。
「ちょっと不便」が愛おしい
思えば私も、そういう「ちょっと不便」に惹かれます。
・CDで音楽を聴く(レコードほど本格的ではないけれど)
・紙の本を読む
・オーブンで時間をかけてお菓子を焼く
・ポットで紅茶を丁寧にいれる
どれも、効率だけを求めるなら省けることばかり。
それでも、この過程にしかない楽しみがあるからやめられません。
もちろん、洗濯機やパソコンがなければ仕事も生活も立ち行かない現代人です。
便利さを否定するつもりはありません。
そして、ヨーロッパにかぶれていても、日本語しか話せなくて外国人が近くに来るとビビってしまう引っ込み思案な日本人です。
それでも、ほんの少しの不便さが、暮らしに深みや彩りを与えてくれる。そのことを、この本が思い出させてくれました。
日々の暮らしの中に、あえて残す「ひと手間」。それは効率には換えられない、小さな豊かさなのだと私は思います。