「軟水」でいれた紅茶と「硬水」でいれた紅茶の違いをお話しするのですが、日本の「水道水の軟水」と「ボトルドウォーターの硬水」のほうが現実的だと思うので、その流れでお話しします。
水道水の硬水、ボトルドウォーターの軟水を含めて考えるとややこしくなるので、ここでは割愛いたします。
日本の水道水の軟水でいれた紅茶
- 水色:明るめ・クリア
- 香り:出る
- 味:しっかり出る
- 口当たり:スッキリ
- 渋味:出る
ボトルドウォーターの硬水でいれた紅茶
- 水色:暗め・濁る
- 香り:出にくい
- 味:出にくい
- 口当たり:重くとろみを感じる
- 渋味:渋味は出ないがえぐみを感じる
カルシウムとマグネシウムの量で決まる軟水と硬水の違い
飲料水の代表的な分類のしかたに、水の中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量で決まる「水の硬度」による分類方法があります。
ミネラルウォーターのペットボトルの成分表示に「軟水」「中硬水」「硬水」などの記載がありますが、これらの表示が「水の硬度」による分類です。
この「水の硬度」は、水の中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量によって分類されます。分類の仕方は、日本国内とWHO(世界保健機関)では異なっています。
出展:https://99bako.com/29.html
WHO(世界保健機関)の基準では、硬度が0~60mg/l 未満を「軟水」、60~120mg/l 未満を「中程度の軟水」、120~180mg/l 未満を「硬水」、180mg/l以上を「非常な硬水」といいます。また、日本においては一般的には、硬度0~100mg/lを軟水、101~300mg/lを中硬水、301mg/l以上を硬水に分けられています。
出展:evian.com
日本の水道水の軟水
日本の水道水はミネラル分の少ない軟水が多いです。(※硬水のところもある。私の実家の水は硬水)
軟水でいれた紅茶は、明るくクリアな水色になります。赤茶~オレンジ系のきれいな色合いです。
軟水は素材の味を引き出します。そのため、軽い茶葉は軽めに、濃い味の茶葉はしっかりした味が引き出されます。紅茶の味が十分に引き出されるので、紅茶の抽出には向いているとティークラブでは考えています。
紅茶の味はしっかりと引き出されますが、雑味やえぐみはなく、味わいはスッキリします。
紅茶の味をしっかり引き出すということは、渋みも出ます。渋みは紅茶の必要な要素だと考えているので、渋みが出るのは悪いことだとは考えておりません。
ボトルドウォーターの硬水
ヨーロッパの国々の水やボトルドウォーターは、ミネラル分の多い硬水です。日本の水道水も場所によっては硬水のところがありますが、ここではボトルドウォーターの硬水に関してお話しします。
紅茶を硬水でいれると、水に含まれるカルシウムやマグネシウムと紅茶のタンニン成分が反応することでさまざまな影響が出ます。
硬水でいれた紅茶は、黒っぽく、濁りのある水色になります。中でも硬度が高い水でいれた紅茶は、濁りがひどく「水色」などと言う言葉がはばかられるくらい汚い色になります。
硬水は、素材の味を引き出しにくいので、香りはあまり出ません。
味は出にくいのですが、とろみあるような口当たりで重く感じます。
渋みは抑えらます。硬度が高いほど渋味がなくなりますが、えぐみを感じるようになります。多くの日本人は飲みにくいと感じるはずです。
写真でうまく撮れなかったのですが、水色が濁っています。時間がたつと膜を張ります。灰汁が浮くような感じ。アップで撮っても灰汁の膜が写せなかったのが残念です。
軟水でいれた紅茶
ティークラブでは、「紅茶の味や香りの要素=茶葉の持ち味」をできるだけ引き出したい、それが良い紅茶の抽出だと考えています。そのため、素材の味を引き出す軟水で紅茶をいれることをおすすめしています。
軟水でいれると渋みも出やすくなります。紅茶には渋みがあるからです。茶葉によって渋みの強い茶葉、弱い茶葉がありますが、紅茶には渋みがあるのです。それが紅茶です。
硬水でいれた紅茶
それに対して、中程度の硬水(硬度100~180mg/l程度)で紅茶をいれると、素材の持ち味が引き出されにくくなり、渋みが和らぎます。香りや味の要素も抑えられて抽出されます。水色はやや濃くなります。
紅茶の色は濃いけれど、渋みが弱い紅茶になります。味や香りもやや優しいまろやかな味になります。
「渋い紅茶が苦手な人は、中程度の硬水でいれると良い」という説もあります。
間違ってはいませんが、ティークラブではおすすめはしていません。
なぜなら、渋い紅茶が苦手なら、渋味の優しい茶葉を選べば良いと考えるからです。
手間をかけていれ方を工夫するよりも茶葉を選び直せば良いのです。
そして、渋味が抑えられるのは事実ですが、水色は悪く、香りや味は弱まり、えぐみを感じます。
水色が悪く膜が張るので、私は見た目だけでも飲む気がしなくなります。そして、ティーポットやティーカップに灰汁がべったり。この灰汁がえぐみにつながる。しっかり洗わないと汚れがつき、手間が増える。
渋みだけに着目して硬水が良いという説は、実際に紅茶をいれて飲んでいないのでは?と思ったりもします。
また、そもそもの話、渋味が苦手な人は、紅茶が苦手な人が多い。無理して紅茶を飲まなくてもよいのではないでしょうか。
紅茶は嗜好品です。好きな人が飲むものです。苦手なら飲まなくてもよいのではないか、と思っています。
とはいえ、硬水の紅茶が必要なときもあると思っています。それは…
イギリスで飲んだ紅茶
イギリスで飲む紅茶は、硬水でいれたものが多いです。
ですので、イギリスの滞在期間が長い人は、日本に帰ってから日本の軟水でいれた紅茶を飲むと「なんか違う」と思うことがあります。
硬水でいれた紅茶に慣れているからです。
中にはイギリスの紅茶は美味しく、日本の紅茶は美味しくないと思う人もいるようです。
その逆もあって、私がイギリスに行ったときに、日本から持っていった茶葉をイギリスの水でいれたら美味しく感じませんでした。
美味しさというのは、慣れも関係するものです。
イギリス帰りの人が、日本の水道水でいれた紅茶に違和感を覚えたら、硬水で紅茶をいれてみるのも一案です。茶葉の違いもありますから、水だけではないと思いますが、水を変えるのは試す価値があるでしょう。
比較的買いやすい銘柄だとエビアンが良いようですね。イギリスで飲んだ紅茶に近くなるようです。
茶葉の持ち味を引き出すのは軟水
茶葉の持ち味を引き出すのは軟水です。
日本の水道水は軟水が多いので、水道水を使えば良いのです。浄水器は必要に応じて使ってください。
水道水が硬水だとしても、硬度があまり高くなければ大丈夫です。とはいえ、軟水とは味が変わりますから、気になる方は軟水のボトルドウォーターを使うか、高性能の浄水器を使うことを考えてみてください。
そして、紅茶は汲み立ての水の沸かしたての湯でいれるのがベストです。紅茶をいれる時に水を汲み沸かしましょう。
繰り返し言っていますが、紅茶の味に最も影響があるのは「茶葉」です。【いれ方<<茶葉】
本来、紅茶のいれ方は「茶葉ありき」で考えなければ意味がないのです。
イギリスの紅茶は硬水用に作られているものが多いです。イギリスから持ってきた紅茶を日本の水でいれると違和感がある。これは、水の違いもありますが、茶葉が硬水用だからということも考えられます。
いれ方はもちろん大事です。しかしながら、茶葉を抜きにして、いれ方にばかり気を取られていると、美味しい紅茶から離れることが多いです。気をつけましょう。
ちなみに、私の実家の水は硬水です。
その水で紅茶をいれると日頃飲んでいる紅茶よりも劣ります。香りも味も弱いです。ですが、私はそのまま飲んでいます。
軟水でいれればもっと美味しくなるでしょうが、そこまでしなくても好きな茶葉は美味しい。ショボイ茶葉の紅茶をベストな抽出で飲むよりも美味しいです。