紅茶のいれ方の神髄は、「茶葉の持ち味を100%引き出す」ことにあります。
前回の投稿で「紅茶はいれ方(抽出技術)で美味しくならない」とお話しました。「紅茶のいれ方に技術などない」とも言いました。
紅茶に抽出技術があるとすれば、茶葉の持つ美味しさを100%引き出すためにあるものです。
「茶葉の持ち味を100%引き出す」言い方を変えると「茶葉の持ち味以上には美味しくならない」ということです。
いれ方で美味しくしたり、いれ方で味を変えたりするのではありません。
無理やり数字でいうと「100点の茶葉から100点の紅茶の味を引き出す」「30点の茶葉から30点の紅茶の味を引き出す」というイメージです。
言われたら当たり前のことなのですが、いれ方で美味しくなると思っている人が案外多いように感じます。
料理の場合は貧弱な食材でも調理技術や味付けで美味しくしなることがあります。それが腕の見せ所だったりすることもあります。その一方で、よい素材でも腕がない人が調理すると残念な感じになってしまうこともありますよね。
いれ方に注目するのは、その影響もあるのでしょう。
また、マスコミが紅茶のいれ方に関することばかりを伝える。進化系や新常識、目から鱗など目新しい上辺の情報やテクニックを持て囃す傾向にあるので、その影響を受けることもあるでしょう。
たとえどのようなテクニックがあったとしても「紅茶のいれ方は、茶葉の持ち味を100%引き出す」ためにあります。
紅茶の味は茶葉のポテンシャルを超えないのです。
つまりは、紅茶のいれ方は茶葉ありきということです。
紅茶の好みは人それぞれ
紅茶のいれ方は茶葉の持ち味を100%引き出すもの。紅茶の味は茶葉のポテンシャルを超えない。そうはいっても、紅茶の味の好みは人それぞれです。
コクある紅茶が好きな人がいれば、あっさりと軽い紅茶が好きな人もいるでしょう。ナチュラルな茶葉が好きな人がいれば、人工的に香りを着けたフレーバーティーが好きな人もいるでしょう。
数字でいうと100点の紅茶が好きな人がいれば、30点の紅茶が好きな人もいるでしょう。30点の紅茶が好きな人に100点の紅茶を飲みましょうということではありません。自分が好きな紅茶を飲めばいいのです。
けれども、30点の紅茶には満足していない。もっと美味しい紅茶が飲みたいと思っているのなら、茶葉を見直さなければ、いれ方を見直しても紅茶の味はあまり変わりません。いれ方だけでは30点の茶葉は40点の紅茶にならないからです。
残念ながら、美味しくない茶葉を美味しくする魔法のようなものはないのです。
紅茶は気楽にいれましょう
「茶葉の持つ美味しさを100%引き出す」など言いましたが、ここまで力まなくてもいいです。紅茶はもっと気軽に楽しみましょう。
100点の茶葉で80点の紅茶でもいいと思います。
30点の茶葉で20点の紅茶でもいいじゃないですか。
自分好みの茶葉をいれた紅茶なら十分に美味しいはずです。
好みにもよるので一概にはいえませんが、100点の茶葉をちょっとミスって70点の紅茶になったのと、30点の茶葉を頑張っていれた30点の紅茶を比べると、70点の紅茶の方が美味しかったりするものです。
また、好み茶葉で80点の紅茶は、好みじゃない茶葉の100点の紅茶より美味しいはずです。
100点の茶葉が30点の紅茶になったら、もったいないですよ。正しくいれる(正しい抽出)は必要です。ですが、気軽にいれて80点や90点だったら十分に美味しい、何の問題もないと思います。
家庭で飲む紅茶は、いれ方を楽しむものではなくて、ましてやいれ方を極めるものではなくて、ティータイム・お茶の時間を楽しむためのものではありませんか。
だとしたら、いれ方に気を取られ過ぎて、疲れてしまっては本末転倒ではありませんか。気楽にいれて大丈夫です。好みの茶葉なら少しくらいミスっても美味しいはずです。
自分にとっての美味しい紅茶は、他人が美味しい紅茶ではなく、自分が美味しいと思うものだからです。