スコーンのレシピができあがるまで
多くの紅茶好きから好評をいただくスコーンのレシピができるまでをお話します。
スコーンは、当店で開催している紅茶教室で2000年くらいから出しています。それなりに満足していましたが「これ」というレシピが見つからず、自分の理想を目指しながら、多くのお客様の声を参考にして、思考錯誤を重ねました。
・全粒粉を入れたり、強力粉を増やしたり減らしたり、水分量をかえたり
・レーズン、くるみ、ごまなどを入れたり
・一気に作りあげたり、途中で休ませたり、何度か捏ねたり、まったく捏ねなかったり
・少しずつレシピをかえいろいろなスコーンを作りました。
10年くらい経ったころ、ようやく私の理想とお客様の声の接点としての『理想のスコーン』ができ上がりました。
レシピを見た多くの人が「普通じゃない?」「こんなレシピに10年もかかったの?」と思うでしょう。正直、なんてことのないレシピですから(苦笑)
スコーンはケーキのように絶対的な配合や作り方がなく、言ってしまえば「なんでもあり」。なのでレシピの落ち着けどころが難しかったのです。
結局「どのようなスコーンを目指すか」によって答えが決まると考えました。
目指したスコーン
まずは、紅茶好きの人が紅茶と一緒に食べて美味しいと思うもの。
外側は、サクッとしているけど、ガリっとするような固さではないこと。
中は、ふわりと軽く、“口溶けが良い”スコーン。しっとり柔らかではなく、粉粉してるのもNo Good
また、クロテッドクリームとジャムをのせ、ミルクティーと一緒に食べてバランスの良い味と食感を目指しました。
そのまま食べて美味しい?!
このレシピに落ち着く前、スコーンを紅茶教室で出した時に「そのまま食べて美味しい!」「何もつけなくて美味しい!」と言う“誉め言葉”案外多かったのです。
嬉しい反面、ちょっと違うなぁと感じていました。クロテッドクリームとジャムをのせて食べるためのスコーンだったからです。
レシピ自体が“リッチ”だったり、ナッツなどの副材料を加えたりしたので、そのまま食べても美味しいと感じたのでしょう。
足し過ぎた材料を削りシンプルな配合にしました。
『家庭で作る、食べるのだから…』
家庭で作るお菓子とプロが作るお菓子、技術や知識の個人差は仕方ありません。ですが、折角作るのだから、「できる範囲で良いものを目指す」「丁寧に作る」この気持ちが大切だと考えています。
その源泉は、プロじゃないからこそ、家族や友人が食べるのだから、質の良い材料を使い、丁寧に作業すべきだと考えているからです。
そもそも現代社会では、安く簡単にしたいのなら、買うほうが早いのですから…。
「なるべく少ない材料で」「なるべく手順を省いて」「なるべく安価に」。これが「家庭でお菓子を作る条件」とか「家庭でティータイムを楽しむためのもの」などの考えを目に耳にすることがあります。それも一つの考えですが、私にはそのようには思っていません。
レシピのポイント
薄力粉と強力粉をミックス
あまり捏ねないからグルテンが少なく口溶けがよい。
強力粉が入っているから捏ねないけど、ほど良いグルテンが出て、ボロボロにならない。
ベーキングパウダーが少ない。一般的なレシピの半分くらい
ケミカル臭がほとんどしない。強力粉が入っているから捏ねないけど、ほど良いグルテンが出て、適度に膨らむ。
水分量が少ない
軽く仕上がる。外側はサクッとする。
家庭で作ると中側に水分が残りやすい。水分が残ると口溶けが悪くなる。
ベーキングパウダーが少ないから、口は大きく開きません。ですが、強力粉が入り、水分が少ないからフワッと軽く仕上がっています。膨らみが少ないから重くて固いということはありません。
このレシピで作ったスコーンを紅茶教室やイベントなど、多くの場面で、たくさんの人に食べていただきましたが、「今まで食べたスコーンの中で一番美味しい」とか「スコーンのイメージが変わった」「軽いし、モサモサしてなくて美味しい」など、お喜びの声をたくさんいただいております。
材料も作り方もシンプルですから、ぜひ作ってみてください。